2016年07月16日

中原中也「一つのメルヘン」

中原中也「一つのメルヘン」


秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、
小石ばかりの、河原があつて、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。

陽といつても、まるで硅石(けいせき)か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかつた川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました・・・・・・


中原中也「一つのメルヘン」イメージ写真

※蝶の写真提供:yue様


中原中也の詩と写真は、コチラ


一葉にモドル
posted by ツバキ アキラ at 19:00| Comment(0) | 中原中也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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