2016年06月04日

中原中也「春の夜」

中原中也「春の夜」


燻銀(いぶしぎん)なる窓枠の中になごやかに
  一枝の花、桃色の花。

月光うけて失神し
  庭(には)の土面(つちも)は附黒子(つけぼくろ)。

あゝこともなしこともなし
  樹々よはにかみ立ちまはれ。

このすゞろなる物の音(ね)に
  希望はあらず、さてはまた、懺悔もあらず。

山虔(つつま)しき木工のみ、
  夢の裡(うち)なる隊商のその足竝(あしなみ)もほのみゆれ。

窓の中(うち)にはさはやかの、おぼろかの
  砂の色せる絹衣(ごろも)。

かびろき胸のピアノ鳴り
  祖先はあらず、親も消(け)ぬ。

埋みし犬の何処(いづく)にか、
  蕃紅花色(さふらんいろ)に湧きいづる
     春の夜や。


中原中也「春の夜」イメージ写真



中原中也の詩と写真は、コチラ


一葉にモドル
posted by ツバキ アキラ at 19:00| Comment(0) | 中原中也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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