ひょんなことから、アタシは、新宿は歌舞伎町にある「初心 -UBU-」という
SMバーの扉を開いた。
縛ったり、縛られたり。
実を言うと、アタシはさほど興味を感じていなかった。
どちらかというと、苦手だとすら思っていた。
それまで見たことのある緊縛写真は、女性が縛られて、作りもののしどけない仕草を
得意満面にしていたり、エロさばかりに焦点をあてた、撮り手の自己満足しか感じられない
ものばかりだったので、心を動かされることもなく、ただ辟易していただけだった。
でも、初めて「本物」の縛りを見て、アタシは大いに感動した。
そう、感動したのだ。
この店に連れて行って下さった、おちよさんが縛って頂くことになった。
おちよさんの体を触りながら、「固いですね」と、縄師のびんごさん。
おちよさんも、緊張の面持ち。
しかし、ゆっくりと、しかし確実に、幾重にも縄が、おちよさんの体に食い込む。
緊張していた、おちよさんの表情が、次第に汗ばみ、紅潮し・・・
おちよさんの体は天井から吊り下げられた。
でも、実はここからが本番。
じわじわと縄を解いていくにつれ、おちよさんの口から声が漏れ始めた。
ただ解くのではない。
実に優しく、しかし、いたぶるように、体を掴み、縄を這わせて、ゆっくりゆっくりと
縄を解いていく様。
縄師の所作が美しいこと。
おちよさんの体は、痛みと快楽で痙攣し、忘我の表情を浮かべていた。
縄の最後の1本まで、おちよさんに悦楽を与えながら解き、縄師が一礼するまで、
写真を撮りながら、どこか神聖な気持ちで、アタシは一部始終を見ていた。
ある種の様式美に触れた気がした。
それは、美学に満ちた、とても美しい世界だった。
世の中には、縛り方を覚えて、縛るだけなら、できる方はいるようだが、
本物の縄師とは、縛る女性の体と対話をし、慈しみ、痛みを与え、痛みを快楽へ導き、
二人の間に濃密な世界を創り出すものだと、自分なりに理解した。
それは、本当に美しい、精神の交感の空間なのだ。
ちょっと勉強して、縛れるようになっただけでは、生み出すことのできない美学。
アタシは、その日、新しい世界の扉をも開いたのである。
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一葉にモドル
2014年07月30日
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