AGFA APX 400
スメハチを携えて、浅草の地下商店街に潜り込んだ。
普段は、都営浅草線を利用しているので、お目にかかることがない地下街だが、
「そう言えば、あったよなぁ」と、松屋の前まで来たら、こっそりと地下への入り口が
口を開けていた。おお、ここだ、ここだ。
細い階段に、いきなりワクワクしてしまう。埃をかぶったダクトに見蕩れてしまう。
階段を降りたら、そこは立ち食い蕎麦屋。隣は、700円カットの床屋。
シャッターをきったら、思いっきり人が横切ってしまっていた。無し、今の無し。
見上げれば、天井の模様が、なんだかモダン。
見渡せば、そこは明らかに地上とは一線を画した、異空間。
わぁ!なんだ!なんだ!なんだ!ここは!
焼きそばを食べている人々の、すぐ隣が銀座線の改札だ。
中華料理屋の椅子が、妙に可愛い。色は、ピンクだ。
天井には、剥き出しの鉄骨。
閉じられたシャッターに「就寝厳禁」の貼り紙がしてあるが、貼り紙自体が、ちょっと寝ている。
居酒屋あり、カフェあり、寿司屋あり。
地上に上がる・・はずの階段が、ものすごい様相を呈している。
行き止まりが、これまたスゴイ。
壁に、なんとも言えないアートが描かれている。
向かいの店にも、洒落たステッカーが所狭しと貼り付けてある。
吊り下げられたミラーボールがシュールだ。
地上に出る階段を上りかけたら、床屋が一軒。どこか哀愁が漂っている。
ちょっとだけフィルムが余ったので、南千住まで歩くついでに、ワチャワチャしたものを
撮って歩いた。
電気メーターがえらいことになっている。もはや、ただぶら下がっているだけ。
地下商店街で鉄骨に骨抜きにされた余韻で、立体駐車場の鉄骨まで気になってしまう。
居酒屋の店内と思しきものは、ゲンさんの家。
元々揚げ物屋だった店を、そのまま借りて、夜な夜な友人達と盛り上がっているそうだ。
吉原大門近くの「いろは会商店街」で声を掛けて貰って、お茶を御馳走になった。
ゲンさん、近所のおばさんが作ってきたというシチューをしきりに勧める。
シチューはあまり口に合わなかったのだろうか。
ともあれ、とても楽しい出会いだった。
最後は泪橋交差点で終了。
一見すると、ただの交差点にしか見えないが、『あしたのジョー』が好きな方には、
たまらんスポット。
ただし、そこに流れていたという川は、もう無い。

地下街の混沌に興奮し、商店街の人の温もりに触れ、ゲンさんの家にまでお邪魔してしまった。
ディープな散歩だったぜ。
一葉にモドル