AGFA APX 100
浅草から南千住へ、ブラブラ歩いた。
向かったのは、吉原大門交差点近くの「いろは会商店街」。
道中、目についたものをパチャパチャ撮っていたので、フィルムが足りなくなるんじゃないかと
ドキドキした。
どうも、この辺りは、素敵な眺めが多くてイケナイ。
吉原の名残漂う、老舗の天ぷら屋「伊勢屋」さんと、桜鍋の店「中江」。
この辺りには、吉原と言ったら桜鍋、という程に、桜鍋の店が沢山あったそうだ。
振り返れば、見返り柳が無惨な様相を呈している。あれは、もう、柳とは呼べないなぁ。
と、しんみりしていて、アタシはぶっ飛んだ。
や、矢吹丈が立っているではないかっ。

モチロン、ご本人が佇んでいたわけではない。
等身大の人形である。
ご本人は、真っ白に燃え尽きちゃってるからね。
いきなり、ジョーに迎えられて、びっくりしたが、ここが「いろは会商店街」の入り口であった。
「あしたのジョーのふるさと」という横断幕が、どーんと掲げてある。
『あしたのジョー』で町おこしだ。どうだ。参ったか。参らせてどうする。
商店街の皆様は、とてもフレンドリーで、「写真を撮ってもいいですか?」と尋ねると、
皆さん笑顔で「どうぞ、どうぞ」と答えて下さった。
暖かいなぁ。すごく暖かい。
閉まっている店も多いが、進むにつれ、妙に作業服を扱う店が多くなってきた。それから酒屋。
商店街の出口では、おじさん達がビールケースをテーブルにして、道端で酒盛りをしていた。
まだ、おやつ時だというのに、何だか楽しそうだ。
声をかけて、写真を撮らせて頂こうと思ったが、アタシはギョッとしてカメラを下ろした。
酒盛りをしている、おじさん達の周りに、バタバタと人が倒れている。
いや、倒れているんじゃないか。
毛布にくるまって、寝ている。地面に人がゴロゴロと転がっている。
この辺りは、山谷と呼ばれていたドヤ街の端っこでもあるのだ。
いきなり現実を見せつけられて、ひるんでしまった。
これは・・・さすがに撮れないなぁ。
泪橋交差点から、簡易宿泊施設の並ぶドヤ街も歩いてみたが、ここは興味だけで写真を撮って
歩く街ではなかった。
路上で酒を呑んでいる人々。寝ている人々。不自由な体を引きずって、行き交う人々。
人の姿は多いが、活気は無く、重苦しい倦怠感がのしかかってくる。
ジョーが育った街は、こんな所だったのか・・・
ほんの、ひと昔前なら、女一人で入って行ける街ではなかったと思う。
誰も咎めたりはしないけれど、今も、ひょいひょい遊びに行く場所ではないのだろう。

最後に見かけた、猫の姿に救われた。
一葉にモドル