Kodak Tri-X 400
隙間が好きで好きで、仕方がない。
路地すら飛び越えて、こんな所に人が入れるのか、というような隙間に、雑然と物が打ち捨て
られていると、もうたまらない。
なんだ、この隙間産業は。
隙を突くにも程があるというものだ。
アパートというものも、好きで好きで、仕方がない。
朽ちる程古くなく、生活の香りが濃厚に漂ってくる、そんなアパートが好きだ。
程よく築年数を感じさせて、いい具合の外階段がついていると、グッときてしまう。
飽くまで、自分基準での判断ではあるけれど。
というわけで。
スメハチに、モノクロフィルムを詰め込んで、隙間とアパート探しの旅に出た。
少々時間がかかってもいい。
「これは!」と思える隙間とアパートに出会ったら、シャッターをきっていこう。
そう思って、呑気に旅立ったのだが。
1日で撮りきってしまった。
街には、雑多な隙間が隠れていた。
どんどん生まれ変わっていく街の中にも、古いアパートは、まだ残っている。
だが。
こんな隙間も、古いアパートも、いずれは姿を消してしまうのだろう。
アタシは、時代の波に呑み込まれていく、街の尻尾を追いかけているような気分になった。

一葉にモドル