鎌倉は、佐助稲荷神社へ、お狐様に会いに行った。
稲荷神社と言ったら、京都の伏見稲荷大社が有名だが、いやいや、鎌倉も侮れない。
佐助稲荷神社にも、笑ってしまう程、お狐様がいらっしゃるのだ。
ちょっとした、お狐様パラダイス。
幾重にも重なる、赤い鳥居をくぐり抜けて、参道を登る。
いきなり、お狐様が、いらっしゃった。
あっちにも、こっちにも。しかし、どれも、どこかしら、ぶっ壊れている。
申し訳程度に置いてあった、小さな狛犬は、笑っていた。
境内に入って、びっくりした。
お狐様も沢山いらっしゃるが、人が沢山いる。
ひしめきあう程ではないが、去年来た時には、こちらが心配になるぐらい人がいなかったのだ。
何が起きた。
社務所の方曰く、『アド街ック天国』で紹介されたことで、人気が出たらしい。
陶器で出来た、お狐様を買い求めて行く参拝客が増えて、売り切れ御免状態だという。
寂れた雰囲気が好きだったので、少し残念な気もするが、神社にとっては良いことなんだろうな。
神社が賑わえば、壊れているお狐様が、綺麗に修復されるかもしれない。
頑張れ、佐助稲荷。
それにしても、ここのお狐様は、表情豊かで、バリエーションに富んでいる。
すまし顔、いかつい顔、息を呑む程美しい顔もあれば、コミカルな顔もあって、見飽きることがない。
地蔵風、犬風、クマ風、猫風、ブタ風、ロバ風、河童風・・・実に様々な、お狐様が楽しめる。
下社から、本殿、奥社と参拝しながら回った。
奥社の脇に道が続いている。
山へ登ればハイキングコースへ突入、下へぐるりと回ると、古い稲荷群が見られる。
小さな一角だが、日の当たらない場所にある、古い稲荷群は、ちょっとした雰囲気だった。
苔むした小さな祠が、ポツポツと無造作に置かれ、長い年月風雨にさらされて、とろけたような
お狐様が、放置されている。
この荒廃ぶりは、少し怖い感じすらしてしまう。
ゾクゾクしながら戻って来て、何気なく奉納された絵馬を見た途端、一気に和んだ。
和むというより、ずっこけた。
一番目立つ所にかけてある絵馬が、シュール過ぎる。
絵が、シュールだ。
願い事が、これまたシュールだ。「これからもよろしくおねがいします」。
きっと、これは、佐助稲荷のお狐様が来て、夜中にこっそり書いたものに違いない。
さほど大きくはない空間に、ワンダーがぎゅっと凝縮された、佐助稲荷神社。
行ってみない手は無いですぞ。

一葉にモドル